女形歌舞伎舞踊の最高傑作といわれる「京鹿子娘道成寺」はもともと能の「娘道成寺」を素材にして作られ、舞もさることながら豪華絢爛たる様式美、色彩美を展開する構成となりました。この物語は、恋する男、安珍の後を追い、白拍子花子に身をやつした清姫が、紀州道成寺に到着しますが、女人禁制の道成寺に入ることがかなわず寺僧の前で舞を踊り、寺僧達が舞に酔いしれている隙に、安珍の隠れ潜んでいる鐘を蛇神となり恋の炎、執念の炎で溶け殺そうとするというものです。これを抑えようとする道成寺の寺侍、大舘左馬五郎の大活躍、いわゆる歌舞伎十八番「押し戻し」の場面となります。