市川宗家のお家芸である歌舞伎十八番の中でも、現在は独立して演じられることの多い「毛抜」・「鳴神」・「不動」。これらを「通し狂言」という上演手法で表現したのが、本演目「雷鳴不動北山櫻」です。「毛抜」では、公家の家臣である粂寺弾正の名推理が冴えわたり、主君の許嫁の髪が逆立つ奇病を、実は忍びの持つ磁石が原因だと見破る痛快なお話です。山車の中では、弾正が見事に忍びを捕らえ成敗している場面を表しています。「鳴神」では、朝廷への恨みから世を干ばつの被害に陥れた鳴神上人が、勅命により差し向けられた雲絶間姫により、酒や色香に溺れた挙句眠ってしまいます。その間に絶間姫は、滝壺に封印された龍神を解き放ち、龍は瞬く間に昇天し雨を降らせました。上人はあまりの怒りに雷へと姿を変えてしまいます。最後の「不動」で、ついに勧善懲悪の化身である不動明王が降臨し、あらゆる問題を解決に導き、物語はクライマックスを迎えるのです。