時は永禄四年八月、乾坤一擲の覚悟を決め、春日山城毘沙門堂から出た越後の龍、上杉政虎(謙信)は血気あふれる諸将を集め、この戦の大義と子細を伝え、一万』二千の兵を従えて出陣し。戦場となる川中島を眼下に望む妻女山に陣を張りました。一方、茶臼山に陣を敷く甲斐の虎、武田信玄は終夜かが り火を焚き、敵を威嚇するように喊声を上げます。負けじと政虎も喊声を上げるよう兵に命じます。 明けて九月、信玄はいよいよ政虎を打つべく、妻女山に兵を向けます。その準備の最中、武田軍の炊煙の多さを見抜いた政虎は、夜陰に乗じて山を下り、深い朝霧の中、武田軍と対峙します。 春日山城下で政虎の心の女、乃美が病の身を押して毘沙門天へ政虎の武運を祈る中、川中島で、いよいよ龍と虎が決戦の時を迎えようとしている場面であります。