時は平安朝延喜の御代、学者や政治家として有名な右大臣菅原道真公は、朝廷で対立する左大臣藤原時平にとって、目の上のコブのような存在でありました。そのため、道真をなんとか央脚させようと画策した時平は「道真謀反の企みあり」と帝に讒言し、道真は遠い筑紫の地に流されてしまいました。 菅原家再興につくす梅王丸と桜丸、時平のためにはたらく松王丸は、もともと三つ子の兄弟ですが、今は敵同志。吉田社頭に時平の牛車が通りかかった時、梅王丸、桜丸の二人は行列の前に立ちふさがり、お供の松王丸と牛車の前で烈しく争います。その時、牛車を踏み破って時平が姿を現します。その威圧 感の前に二人は、立ち竦んでしまいます。 結局、三人の兄弟は遺恨を残しながら、後日の再会を期して別れるのでした。吉田社頭車引の名場面です。