いつの日か平家をたおし、源氏の白旗を天下になびかせねば・・・鬱勃たる闘志に燃える牛若丸は、日ごと夜ごと、激しい剣の修行に打ちこむ。師は鞍馬山の大僧正、相手は鳥天狗たち。なにしろ相手は、身のかるいことこの上ない。高い木の枝にとびついたり、枝から枝へ飛んだり、そんなことは朝メシまえ。しかもいずれも大僧正の弟子だから、剣法にも通じている。それが、よってたかって牛若丸を翻弄し、打ちすえる。牛若丸は耐えた。胸に秘めた大いなる野望が、牛若丸を支え、そして励ました。ひと月、ふた月……いいつしか牛若丸は、師も舌をまくほどの腕になってい。やがて、山を下ろ牛若丸。それは輝かしい未来への、そして、不幸な末路への、第一歩であった。