満開の桜が一面に咲き誇っている紀州道成寺で鐘の供養が行われる日のこと。
女人禁制の番を仰せつかった所化たちが酒を飲む相談をしていたところ、花子という美しい女がやってきた。鐘供養のことを聞きつけて、都からやってきたという。
鐘に執着している様子で、ぜひ鐘を拝ませてくれと頼む。舞を見せてくれるならと所化たちの交換条件にさっそく舞をはじめる。
荘厳な雰囲気で舞っていたかと思うと、今度は可憐に、時にはしっとりと、または軽快に、そして華やかに次から次へと様々な女の表情を見せながら踊り込んでいくうちに、鐘を見つめる花子の表情がキッと険しくなった。慌てた所化たちを押し倒して花子は鐘の中に姿を隠す。やがて鐘の上に現れた花子は、蛇体と化した恐ろしい姿で周囲を睨みつける。実は花子は清姫の亡霊であり、荒れ狂う怨霊を大館佐馬五郎が大立ち回りをする「押戻」によって屈服させる場面で終わりとなる。