建久三年、征夷大将軍に任命され鎌倉幕府を開いた源頼朝は、翌建久四年五月に富士山麗において、征夷大将軍たる権威を誇示するため巻狩りを行いました。
ある日、幾年経たとも知れぬ大イノシシが一頭、頼朝めがけて猛然と襲い掛かってきました。家来が次々に吹き飛ばされ、さしもの頼朝も「もはや、これまで」と思った刹那、一人の荒武者がヒラリと大イノシシに飛び乗りました。腰の一刀引き抜き、逆手に取って柄も通れとばかりに大イノシシの胴に突き立て、見事これを退治し頼朝の危機を救いました。
大イノシシを仕留めたこの関東武者こそ、豪胆を以って音に聞こえた「新田四郎忠常」であります。新田四郎忠常、功名の一場面であります。