鍜冶町に高橋市郎兵衛という刀鍜冶が住んでいた。ある日、その家の前を山伏風の大男が「けんか売らば買おう」とわめきならが通り過ぎていった。市郎兵衛は、このまま素通りさせたのでは男の面目丸つぶれと山伏を追いかけ、一里塚の近くで決斗に及んだ。手練同士の戦いのため、なかなか決着がつかないかに見えたその時、市郎兵衛は、山となった見物人に「助太刀無用」と叫んだ。一瞬、山伏がひるんだその隙をつき、一撃のもと打ち果たしてしまった。その後、その辺りに山伏の怨念がこもった鬼火が出没し、人々を困らせた。そこで瑞雲院の卍括和尚がここに稲荷神社を祀って祈禱したといわれている。ここにお参りをして立身出世をした人がいたことから、いつの頃からか、上茶屋町出世稲荷神社と人々にあがめられるようになったと言われている。