江戸城の大奥にて正月御嘉例のお鏡曳きの余興でのこと。その席にいた小姓の弥生は無理に引き出されてご祝儀の舞をせねばならなくなった。たおやかな手踊りに続き二枚の舞扇を使って牡丹の香りに誘われて戯れる蝶の情景を舞ってみせた。さらに、御神前に飾られてある獅子頭を手に取って舞い始めると、名作の獅子頭の魂が弥生にのり移って、魅せられたようにだんだんと獅子に惹かれてしまい花道を後にする。すると二人のかわいらしい胡蝶が現れ振り鼓と鞨鼓のリズムに合わせて軽快に舞う。ここで以前の弥生が立派な獅子の精になって花道から登場し一旦は眠りにつくが、胡蝶の精に眠りを覚まし戯れ遊ぶ。音楽もクライマックスを迎え大薩摩(三味線音楽の一種)になって、これまでとは対照的に勇壮に舞い始めるというあらすじである。この度の風流は、弥生が獅子の精に変わらんとする場面と獅子の精が胡蝶の精と戯れ遊ぶ二場面の構成となっている。