歌舞伎狂言の中にて、鯉魚の精と水中にて争う所作を「鯉つかみ物」と称す。筋立てや演出は多数あれど、おおよそは、主人公が人の姿に化けたる鯉魚の精の正体を見抜き、真の水を用いたる舞台上にて、壮絶なる立ち廻りの末にこれを退けるという筋が定型なり。 山車においては、滝窓志賀之助が許嫁に姿を変えたる鯉魚の精を見破り、これを討つ場面と、新庄まつりにて親しまれる、武蔵坊弁慶の幼き頃「鬼若丸」と呼ばれし時代の鯉つかみの場面とを、一つの舞台にて表したるものなり。