川連法眼館の場は、源九郎狐の親狐に対する情愛を見せる名場面である。義経は平家討滅の功により、後白河法皇から、「初音の鼓」を賜った。静御前に賜わった初音の鼓を形見として与え、佐藤忠信に静御前を託す。しかしこの忠信、初音の鼓の皮に張られた親を慕う子狐であった。初音の鼓は千年いきながらえた子狐の父母狐の皮を使ってつくられたもので、親と離れかがたく忠信に化けて静御前をお守りしていた。ところが法眼の舘で本物の忠信と、対面しもはやこれまでかと正体を明かす。これ以上忠信に迷惑をかけられないと去って行く。その親を思う心に涙した義経は源九郎狐を呼び戻し、今まで静御前を守ってくれた褒美にと初音の鼓を与えるのであった。