源義明の死後、常磐御前は三人の子供を連れて逃れ行く途中、伏見の里にて平宗清に捕えられ、清盛の門前につき出されます。清盛の寵愛を受けるように望まれた常磐は、子供助けたさあまりその意に従います。その後一條大蔵師の元に嫁ぎ、源氏の再興の機を窺います。大蔵卿は源氏由縁の者で、折あらば平家を滅ぼそうとの意図を隠し薄馬鹿を装います。吉岡鬼次郎は頼朝譜代の忠臣にて、常磐が一條に嫁ぎ栄華に暮らす様を見て、その真意を確かめようと奥庭深く飛び込み様子を窺います。そして吉岡は、常磐が平家調伏の通し矢をやっているところを見て、安堵して引き上げようとした所、一條大蔵卿の家来成瀬勘解由があらわれ、この事を清盛公に注進しようと駆け出しました。これを簾の内より出た大蔵師が不忠の臣とばかり一刀のもとに切り捨てます。 一條大蔵譚、奥御殿の場、大詰めの一場面です。