江戸城内の鏡開きの日に先立つ行事で、技芸を披露する役に選ばれた小姓の弥生。最初は恥じらっていましたが、しだいに舞に没頭し始め、祭壇に置いてあった手獅子を取って舞いはじめると、どこからか胡蝶が迷い込み、獅子頭に込められた獅子の魂が覚醒します。獅子頭は弥生の意思とは関係なく勝手に動き出してしまい、袖で押さえようとしても止まらなくなり、獅子頭は強引に弥生を引きずったまま、いずこかへ消え去ってしまいました。しばらくすると、胡蝶の精があらわれて、牡丹の花と戯れるように舞いはじめます。そして張りつめた空気の中に、勇壮な獅子の精があらわれ、長い毛を豪快に振り立てて舞い狂います。獅子と牡丹は、それぞれ獣の王、花の王として古代より豪華絢爛お祝い事の象徴であり、この作品は九代目市川團十郎が新歌舞伎十八番のひとつに選んだもの。能の「石橋」に大愛を求めた「獅子物」の代表作です。