出羽国雄勝の郷に小野小町という絶世の美女がいた。小町が京へ上がることとなったその前夜、夢枕に神室の天狗(かむてん)が現れ「小町よ、神室山には幻の三滝という竜神が住む恐ろしい難所がある。しかし、竜神に大切なものを差し出せばきっと通してくれるだろう。」と告げて消えた。小町が神室山の山越えに差しかかり一の滝にたどり着くと竜神が目をむき飛びかかろうとしている。小町はとっさに「かむてん」のお告げを思い出し着物を脱いで滝壷に投げ入れると滝は消えた。二の滝では、笠と杖を投げ入れ難を逃れ、三の滝へと向かった。三の滝は、これまで以上に竜神が暴れまわりまさに地獄図の様相であった。しかし、ここにきて、大切なものは命しか残ってなく思わず手を合わせると、「かむてん」が眼前に現れ「小町よ、お前は歌人だろう。大切な筆と短冊があるはず。それを差し出すがいい。たとえ筆がなくとも大の心を打つ歌は詠めるはずじゃ。」と告げた。小町が差し出した短冊は小船へ筆は櫂に変わり小町はそれに乗って無事に京へ着いたという六歌仙小野小町と神室山の守り神「かむてん」のいにしえの物語です。