中国の揚子江の里に、高風という大変親孝行な男が住んでいました。ある暁のこと、高風は、市場で酒を売れば富栄えることが出来るという夢を見ます。夢のお告げに従いお酒の商売をしたところ、高風はだんだんとお金持ちになっていきました。高風の店では、不思議なことがありました。いつも酒を買い求めて飲む者がいたのですが、いくら酒を飲んでも顔色の変わることがありません。高風が名を尋ねると「水の中に住む猩々だ」と名乗りました。そこで高風は、酒を持って入江に行き、猩々が現れるのを待っていました。すると猩々が現れ、高風に逢えた喜びを語り、酒を飲んで踊り出しました。そして心の素直な高風を称え、酒のお礼として酌めども尽きぬ酒の泉が湧く壺を贈ると、水の中に帰っていきました。それは高風の夢の中の出来事でしたが、酒壺はそのままの残り、高風の家は長く栄えたという誠におめでたいお話しです。