平安の昔、源頼光の四天王、渡辺綱の鬼退治にまつわる物語です。ある夜京都の一条戻橋に渡辺綱がさしかかると、若い女（実は茨木童子）が綱を呼び止め、五条までいっしよに行ってほしいと願います。綱が女を馬に乗せるや否や、女は鬼の姿に変わり綱の髷をつかみ宙へ引き上げました。綱は慌てず名刀鬚切りで自分をつかんでいる左腕をばっさり切り落し、鬼は逃げ去りました。その後陰陽師の命令で誰も家へ入れず物忌みしていると、茨木童子が叔母の姿に化けてやってきます。どうしても家へ入れるようしつこく頼むのでとうとう綱が家の戸を開けると叔母は鬼の姿となり、床の間に置いてあった自分の左腕を取り上げ、破風を破って空へ去って行きました。長唄綱館をもとに河竹黙阿弥が作った舞踊劇で、音羽屋のお家芸新古演劇十種のひとつとなっています。
