風流 牛若丸

4番運行
物語部門

解説

京の町に、「身のたけ一丈(三メートル)あまりの天狗が夜な夜な現われ、刀を奪い取るそうな」との噂が立ち始めた頃。弁慶は、五条天神に念じた刀千木に、あと一本で達するという満願の日、欄干にもたれて鴨の川面に輝やく月影に陶酔すること暫し。
笛を吹きながら、塗り下駄に天女の羽衣に似た被衣をはためかせ、橋の上に差しかゝる者あり。弁慶、「すわ得たり」と大薙刀の光りが虹を引いて一閃に振り払う。美童、橋板を蹴っつ舞い上がること正に変幻飛鳥の業、回を重ねて幾敷次、精根果てた弁慶が伏して名を問えば「我は左馬頭義朝が九男牛若」と答う。
七つの年から、鞍馬の奥、僧正ヶ谷で唯一人武芸を積んだ牛若丸には、比叡山が誇る三千の荒法師に恐れられた流石の弁慶も意の如くならず、自らも名を告げ、主従の誓いを立てるという物語である。
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