講談・歌舞伎でお馴染みの河内山宗俊は、代々が奥坊主をつとめたという家柄に生まれましたが、ふとしたことから跡をつげないまま自暴自棄となり、数々の悪事を犯すことになります。河内山は、町家の娘を松江出雲守の手から救出をするため、上野の宮の御使僧に化け、直侍を家来に仕立てて松江邸に乗りこみました。娘を取り返しての帰りがけ、玄関先で見破られるのでありますが、家来高木小左衛門のはからいで、無事帰ることが出来たのであります。河竹黙阿弥作の歌舞伎狂言「天衣紛上野初花・くもにまごううえののはつはな」七幕のうち、四幕目の松江邸の場でありますか、明冶十四年に初演され明治歌舞伎の全盛期を飾る代表的作品の一つであります。