吉野山中、川連法眼の館に滞在した義経のもとに久々にて静御前に供をさせておった忠信か挨拶に来ておったが、その言動動作がふにおちないでおる処に……また忠信が訪れて来たと云う知せがあり、二人の忠信に不信を抱いた義経は静にその正邪を質した処、静は『この賜わりし「初音の鼓」を打つと忠信は必ずどこに居っても現われる』と言上した。早埋鼓を打つと先に訪れておった忠信は、実は狐の化身である事が判ったのである。狐忠信は、その初音の鼓は自分の親の皮をもって作られたもので、鼓を慕い‥‥畜生と言えども親に孝行を致したく、「義理人情もわきまえております」と申し述べれば、義経はその真心にうたれ、「初音の鼓」を狐忠信にくれてやるのであった。
後日横川覚範(実は平家の大将能登守教経)が白刀をかざして“義経覚悟”と追ってくるが、狐の通力で覚範が一山の暴徒を引きつれて押し寄せて来る事を事前に知らされたのである。そして覚範は捕えられると云う名場面である。
後日横川覚範(実は平家の大将能登守教経)が白刀をかざして“義経覚悟”と追ってくるが、狐の通力で覚範が一山の暴徒を引きつれて押し寄せて来る事を事前に知らされたのである。そして覚範は捕えられると云う名場面である。