平家物語の「剣の巻」にある物語で、主人公頼光は奇病にかかり、仲々直らず苦しんでいた。そんなある夜更けの事、幽かな蠟燭の影から二米位の法師が頼光に近づき、縄でしばろうとした。頼光は驚いてとび起き、枕元の名剣「膝丸」をさっと取って切りつけた。駆け付けた四天王の者達が頼光の指す燭台の下を見ると法師の流した血が有り、それをさぐって行くと北野のあたりで大きな塚に行きあたった。塚を掘り削して見ると中から土蜘蛛の精魂が現れ頼光めがけ干筋の糸を投げて来た。頼光はやっとの事で土蜘蛛を退治し、戦いが終って気が付くと病はすっかり直っていた。その時から名剣膝丸は「蜘蛛切」と名付けられ歌舞伎の中でも一流の役者が蜘蛛の精になり、それぞれが競って演ずる名場面である。