風流 嫗山姥 兼冬公館の場

9番運行
歌舞伎部門

風流嫗山姥 兼冬公館の場

大正町若連囃子:休場囃子若連

解説

源頼光は、右大将清原の高藤の讒訴により行方を隠した。
その許婚の兼冬の娘沢潟姫の心を慰めようと侍女達は、名物の煙草屋源七を呼入れ廓ではやる曲を所望した。折から八重桐は全盛をうたわれた昔の面彫もなく、紙衣姿で表を通りかかると、坂田蔵人時行と馴染めた時に作っだ歌が聞えてきた。不審を抱き一計を案じて、傾城の祐筆、私の一筆でどんな恋を叶わぬことはないと大声を張り上げた。内に呼入れられると、歌の主は時行だった。小陰に隠れるのを、水臭い男大恥をかかせてやろうと姫君から問われるままに坂田時行と訓染みをかさね、朋輩女郎の小田巻と達引とな大騒ぎを起した廓噺を弁舌面白く聴かせた。そして男は父の敵討ちに出かけたが、それは私に飽きがきた口実で、今のように若い女達に囲まれて三味線を弾いていると涙を流した。
姫君が奥へ引きとると、時行はさすが流れの女めとなじるが妹糸萩が仇を討ったと聞かされたので、無念の余り刃を腹に突き立てた。驚く八重桐に向って、わが魂魄そちの胎内に宿って稀代の勇士と生まれ変り高藤らを減さんと云って刀を抜くと、傷口から一塊の熖が八重桐の口に入って女は悶絶した。折柄、姫を奪おうと高藤の家来太田太郎が大勢の手下を引連れて押寄せるが、それまで倒れていた八重桐はむくっと起上るままるで鬼神のように振舞って雑兵どもを追払ってしまった。そして姫君に別れを告げて山に分けいり、のちに坂田金時をのであった。
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