戦国時代末期に、甲斐(山梨県)の武田信玄と越後(新潟県)の上杉謙信が、信濃(長野県)をお互いに手にいれようと、犀川と千曲川とにはさまれた川中島を舞台に、約二十年間にわたり、計五回もの合戦を行った。そのなかでも四回目に行われた合戦が、最も激戦で信玄と謙信が一騎打ちを演じたと伝えられている有名な「川中島の戦い」の場面である。武田信玄の信濃進出により領地を追われた村上義清と小笠原長時らが、越後の上杉謙信に救援を求めた。これに応えた上杉謙信は、信濃路へと出陣した。妻女山に陣取った上杉軍は、霧のかかる夜陰にまぎれて山を下り、千曲川を渡って八幡原に陣取った武田信玄の本陣を急襲し、馬上の謙信が信玄の肩先に切りつけた劇的な場面である。時に永禄四年の事であった。