古い平安時代のお話です。京の羅生門の近くに怪しき鬼女が出没し、都の人々を悩ますとの噂を聞かれた時の天皇は、源頼光に鬼を退治するよう命じました。源頼光の家来渡辺綱は、武勇すぐれた若者でしたので、たった一人羅生門に行き、現れた鬼女と戦い、その片腕を切り落としました。「悪鬼は、七日の間に必ず仇討ちに来るものだ……。」との話に綱は、その間その片腕を金の箱に入れて大事に保存しておりました。丁度七日目に津の国から伯母がたずねて来て一度鬼の腕を見せてくれと何回も頼みました。綱は「帝の命により見せる事はならぬごと断りましたが、再三願われましたので、ちょっと出して見せた処「おおなつかしき我が腕よ。」と伯母はむんずと腕をつかみ取り、たちまち茨木童子の姿に変じて天高く飛び去りました。